2011年05月30日

雑記|タイプ消失


 本日ふいに、次の記事が目に入りました。

「貴重な新種含む昆虫標本6万点焼失…長野(読売新聞)」
昆虫研究家のご自宅で、タイプ標本が8点含む大量の貴重な標本が消失したとのこと。

//以下引用−−

 永井さんは甲虫類を中心に250種以上の新種や亜種を命名。焼けた中には、自分が命名した「モロンシロカブト」(メキシコ産)や「エンドウゴホンツノカブト」(ベトナム産)など新種特定の基にした「タイプ標本」が8種ほど含まれていた。命名前の新種とみられる国内外のカブトムシの標本も約100種あったという。

 図鑑に収録予定だった約800種の約2割は、まだ写真撮影をしていなかった。

                         −−引用ここまで//

研究家ご本人が新種記載に携わってきた分類学者である事を思うと、ご本人の心痛いかばかりかと思います。タイプの消失がどれ程のダメージか、身に染みて判っているはず。

この4コマブログでも時々簡単に書いてきましたが、日本に生息する魚類・甲殻類のうち、かなり多くの種のタイプ標本はオランダのライデン博物館で大事に保管されています。

「どうしてタイプが日本に無いんだ!」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実は分類学上の事情から言えば、「タイプがライデン博物館にある」と判っていて、実際にちゃんとした状態で保管されている分、かなりマシな方だという話を複数の研究者から以前聞いた事がありました。

上のニュースの様に個人所蔵の標本が火災等によって焼失する他、戦時中の行方不明、管理不行き届きによる破損・行方不明等、実際にはタイプ自体が失われている場合も結構あります。
(戦時中ヨーロッパで、タイプ標本を守るために博物館の標本百本以上を防空壕に避難させた逸話等もあったように思いますが、現在うろ覚え発動中です。)

もちろん、本来タイプ標本は大きな博物館等できちんと管理される事が望ましいのですが、標本の種類と博物館側の設備等の関係で、難しい場合もあります。

お世話になった先生も大学でタイプ標本を複数保管していましたが、ご自身の退官後、それを今後どこで保管してもらうか、一時期はかなり悩んでいらっしゃった様でした。(最終的には、国内の信頼の置ける学芸員さんがいらっしゃる大きな博物館に譲渡したと聞いています。以前ちょっと触れましたが、標本の保管は「置いている」だけではだめで、空調他気をつけなければならない条件が色々あるそうです)

標本の痛みが激しかったり、消失しているせいで、どんなに苦労をするのか、いつか4コマで扱いたいとは思っていましたが、ショックなニュースでしたので取り急ぎコメントしてみました。

ニュースの研究家さんも、図鑑の執筆は、かなり大変でしょうね。
けれど、逃げないところに研究家としてのプライドを感じます。
どうか無事成し遂げられますよう、ネットの片隅からお祈りいたします。


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posted by おさんぽ@水際 at 11:26| Comment(4) | 雑記
この記事へのコメント
すごく心の痛いニュースです。
門外漢でもそう思うのだから
研究者の方、当事者はいかばかりか…

「図鑑は遅れても必ず完成させたい」とのこと、やはり心が強いというか、
そうでないと研究者は務まらないのかもしれませんね。
Posted by ぽぴんず at 2011年05月30日 19:41
いつもお世話になっております。
本当にやりきれないニュースですね。

写真撮影が終わった種については、その中に十分な情報が残っている事を祈ります。
タイプの立て直し等やるべき事は山積みなのだと思いますが、少しでもデータの積み直しが出来ますように。
Posted by おさんぽ at 2011年05月31日 08:06
残念でとても無念な事ですが。火元が先生という事なので、まずは倫理的に被害を受けた方への賠償や謝罪が先ではないか…と思ってしまう私は、昆虫好きな方々には嫌われてしまうのでしょうね(;^_^Aみなさん人間の方は亡くなってないから問題ないという考え方が主流な気がしますね。なんてなんか昆虫知らない人間が口出しして、申し訳ありませんでした。
Posted by やな at 2012年02月21日 04:30
やなさん、初めまして。
(もし、Twitter等でご一緒した事のある方でしたら、お教え下さい)
コメントに気が付くのが遅れ、大変申し訳ありません。

私も昆虫は全くの門外感ですが、身近に分類学に携わる人々が多かったので、考え込んでしまったニュースです。
このニュースが報道された当時、分類学に関して詳しく触れる機会の無かった方々の間で、コレクションの金銭的価値ばかりが言及されていたり、この研究者の方を単なるコレクターの様に考えている方が多かった様に思いましたので、
個人的には、「分類学的には、単なる金額の問題ではない計り知れない損失がある。そして、多分この研究者の方こそそれを一番感じていらっしゃるだろう」という事を言いたかったのだと思います。

とは言え、研究者の方に過失があれば賠償、謝罪等が先、というのは、やなさんのご指摘の通りだと思います。
研究をしていたり、長くそういう事に集中して考えていたりすると、時々一般的な感覚とズレてきたり、「コッチが先でしょ!?」って事を忘れかけていたりする事がありますので、門外漢であるからこそのご指摘は大変ありがたいと思います。

また何かありましたら、気軽にご意見やご感想をお聞かせ頂ければ幸いです(^^)
Posted by おさんぽ at 2012年02月27日 08:47
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